あいしてるのブログ

この物語はフィクションです

起きてから歯を磨くまでの5分間

 

何度目かのスヌーズを止めて、布団の中で10秒数える。まだ薄暗く夜の気配がする部屋の中で、ああ、今日もまたぬるい地獄のような1日が始まってしまったと絶望する。

 

温室から出るとたちまち気持ちが落ち着かなくなり指の先がつめたくなる。つよい風に煽られてアイロンで流した前髪が浮き上がる。パスモのチャージが切れそうだと思い、財布にお金がないことに気づく。走れば間に合った電車を一本逃して、爆音の音楽を聞く。会社に行きたくないんだって叫ぶ代わりに、ラブアンドピースを叫ぶミュージシャンの声に心を傾ける。目を閉じなければつくりあげることのできない闇の中で。

 

駅も電車も好きじゃない。品川駅のホームで、サラリーマンに舌打ちをされる。何処を目指せばいいのか分からなくて、わたしは人ごみの中をまともに歩くことができない。生きるスピードが早すぎて、見ているだけで眩暈がする。チューナーは決して合わない、何故なら最初から全部狂ってるから。どうして平気なふりをしていられるのかが分からない。

 

どうして東京にはこんなに沢山の人がいるのだろう。それなのにどうして私はこんなにもひとりぼっちなのだろう。大切にしたい家族が居ても、大好きだと思える友達が居ても、どうしてこんなにもひとりぼっちで寂しくて何処にも居場所がないような気持ちになるのだろう。

 

生まれたときから、今日までずっとそうだったし、これからもきっと、死ぬまでたまらなく孤独なままなのだろう。いっそ本当に、自分の身を投げ出せたならいいのにという夜が、波のような夜を超えて、再びわたしの元へ押し寄せてくるのだろう。

 

生きるための酸素が足りなくて苦しい。全身に力を込めて嘘をつきつづけているような日々は、いつか本当に終わりを迎えるのだろうか?本当は、やりたいことも、ほしいものも、何にも諦めたくないよ。ハッピーエンドなんて何処にもないと分かっていても。

 

たったひとつのわたしの人生。身体が言うことを聞く間に、きみは何かをつかみとることができるか。救世主がフィクションの中だけの存在なのであればわたしは、ノンフィクションの中のヒーローになりたい。泥のような怠惰の中で、きみは愛することを諦めずにいられるか。世界なんてわたしときみとで革命すればいい。光の早さで駆けていくから色鮮やかな未来で待っていてね。約束だよ信じてるから、愛してるよ。