あいしてるのブログ

この物語はフィクションです

オールナイツからうまれる普遍的な日常的な刹那的なポエトリー

 

「誰も知らない」

まだ誰も知らないきみのこと、渋谷スクランブル交差点の横断歩道を渡っている人間はみな目的地を目指すことに夢中で、例えばきみが土砂降りの日に転んで泥まみれになったとしても、例えばきみが真夜中のベッドで一人きり眠れぬ夜を明かしたとしても、例えばきみが月曜日の通勤電車にはねられて生肉の塊になったとしても、名前すらないきみは何処にでもある有象無象の風景でしかない、この世にひとつきり輝きを失いつつある明日には跡形もなくはっきりと消えてしまいそうな、そんな星の名前をきっとまだ誰も知らない

 

「うつくしいひと」

きみの笑った顔が好きです、私の生き方をみにくいと笑うきみの健全な精神にずっと憧れていました、好きな人には好かれるよりも嫌われたい、はっきりとした響きを持つ感情ほど確かだと思える感覚は他にありません、傷つけるために言葉を放ちピンク色に滲む涙をうつくしいと思う、わたしたちの旅路はこれきり交わることはないのでしょう、卒業証書できみの処女膜を突き破りたかった、パラレルワールドでどうか誰より幸せになってください、私本当はぼんやりと寂しくうららかな春のざわめきが大嫌いでした

 

「深夜3時のももいろ吐息」

きみは考えたことがありますか、どれだけ同じ時間を共有してもきみとぼくが繋がれないということの寂しさを、きみは考えたことがありますか、永続的に続く感情などどこにもないと気づいた瞬間の絶望を、きみは考えたことがありますか、終わりのこないような夜寝息を立てているきみの隣で毛布にくるまっているぼくのこと、ぼくたちは同じ夢を見ることができない、ぼくたちはうつくしいものを見た時にまるきり同じようにうつくしいと感じることができない、どれだけ肌を重ねたとしてもぼくたちはきっと分かり合うことができない

 

「脳内ポイズンネガティブちゃん」

きみってセンスいいよね感覚だけが全てなんて言い訳誰にも通用はしないくせにねポーズにしがみついているようなきみは被害者ぶってるだけでしょう特別になんてしてもらえるはずないのに私の痛みは私だけのものなんです誰にも癒せないなら触らせないみたいな傲慢フィクションを現実に持ち込むなんてばかだねさっさと呼吸するの諦めればいいじゃん伝えるものがないのなら言葉なんてもうきみには必要ないんだからさきみはきみのことがきらいだからあのねわたしもきみのことがきらいなんだよ

 

「こいびと」

あなたの欲しいものはこの銀色の斧ですかそれともこの金色の斧ですか、いいえどちらでもありませんわたしが欲しかったものはこの池に取り残されているあなた自身なのですから、おとぎ話を作り変えるのは習慣や文化に左右されないひとりがひとりに向けるつよい感情、問題だらけなわたしとあなたはふたりでいれば最強のバディだから、ひとりで無欠みたいな人間同士で火花を散らす生き方のうつくしさ

 

「きみの小説は退屈で平凡」

きみの文章がつまらないのは自傷するふりをしているから、輪廻の輪から抜け出すのが怖くて停滞しているだけだから、不健康だからこそ甘い感傷捨てるなんてまっぴらだなんて格好をつけているから、死ぬ迄できないことなんて全部嘘だから、本物になりたい特別になりたい神様になりたい、あなたにはじめて発見される夜空にかがやく星になりたい

 

「停滞と破壊」

何をしていても何処にいても被害者意識が消えなくてそれは消えないんじゃなくて消してないだけでしょう、ねえ知ってる感情のマグマを直接ぶつけるみたいなのはコミュニケーションじゃなくてただの破壊衝動だからね、地団太踏んで喚き散らすみたいなことばかりして自分にとって一番重要なカードから先に捨てているみたいな生き方、不幸に酔ってるなんてわかってるよ、変わることも変わらないこともきみの選んだ結果なんだから、どんな風になりたいかなるべきかなんて答えひとつだけなのにね、きみの手足を縛る鎖をようやく結局破壊して喚きながら走り出しなよ、何かを捨てなければ手に入らないものがどうしても欲しいのなら