あいしてるのブログ

この物語はフィクションです

邦ロックと私青春のエモ

 

「星」 

君は青く光るお星様、冷たすぎて寄る辺もない。驚くほど人に慣れていない君はひょっとしたら私よりも不器用な女の子。だってこの曲が終われば私は君を忘れるけれど、君はきっと私を忘れることができない。全部投げ出して会いに行きたくなるような恋を君はしたことがあるのかな。そういう相手にいつか出会えるといいね、そういう相手と愛を伝え合えるといいね。報われない気持ちほど忘れられない。私を分かりやすいって笑う分かりにくい君のこと思い出すのは何故かこんな星の煌めく夜ばかりだ。

 

「青色」

走り始めて少しずつ合わなくなるリズム、ドラムの上で無理矢理保っているぎりぎりのグルーブ。音の芯が分からなくなるまでもっと壊れてしまえばいい。そうすれば舞台の上で辱められて、私たちはもうだめなんだってことがやっと君にも伝わるだろう。いくら君のことが好きでも、私は君の付け合わせにはなれない。そんなの最初から混じり合えないのなんて分かってるでしょ。こんな偽物の音楽クソくらえだ、あはは力入れすぎたせいで一弦が切れちゃったね。いつからこんな風になっちゃったのかな、全部きっと私が悪いんだ。何年前のことまだ根に持っているような陰湿な女でごめんね。今まで楽しかったよ、じゃあねバイバイ。好きだったなんて言わないよ。

 

「銀河」

私の精神安定剤。カッターナイフとハルシオン援助交際。どんなにへんてこな音楽だって二人が弾くと全然尖ったところなくなるんだもん不思議だね。一緒に行った場所は数え切れなくて、一緒に過ごした時間は恋人よりも長くって。それなのに私たち、あの数年間なかったみたいに現在進行形猛スピードで離れていくんだね。いつかもう一度笑い合うことができるのかなんてこと考えるとまた胸がぎゅんぎゅん痛くなるよ。人はその時一番近くにいる人のことを友達と呼ぶのです。そんなことわかってる。みんなそれぞれ必死に生きてるだけなのです。それもわかってるうるせえよだけど。私は多分あなたたちみたいな友達は絶対に特別なんだ、あなたがもう私のことそんな風に思ってくれていなくても。気づいたときにはいつも取り返しがつかなくて、欲しかったものは全部両手で取りこぼしているみたいな人生だね。

 

「蛍」

緊張するときは目を閉じる。目を閉じればあの日につながるような気がする。私の青春はそれがすべてだった。すべてだと勘違いをさせてくれるような時間だったのだ。きっとずっと死ぬまで色褪せない日々のこと、あなたとそれだけでまるきり満たされていた心。私の人生絶頂なのだと気づかせてくれなかったのは神様の意地悪か。ドラムロールを合図に、血管が粟立つ。ショートカットを振り乱して、マイクにがなる。ディストーションを限界までかけたせいで、本物の音はとっくに分からなくなっている。どんなに練習をしたって、ソロをきちんと弾けたことなんてないけれど。でも、この叫びに似た旋律が、あなたの耳に届いていればいいなと思う。他の誰にも立ち入ることのできない閉鎖的な空間に私たちは立っている。音楽が鳴っている間だけは私たちは無敵になれる。女の子が女の子だというだけで不自由さを強いられる世の中だけれど、ギターのピックを握っている間だけは何だってできる。私の手をとってくれる君がいれば、何処へだって走って行ける。誰も見たことのない景色をあなたたちに見せてあげる。だから私のことを特別な女の子にしてください。どうか瞬きをせずに私を見て。私はあなただけの、たった一人の女の子になりたいのです。私の声が聞こえますか。君だけの絶叫を聞かせて。そのままのあなたが好きです。